【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
前稿では、救急医療は本当に赤字なのかについてデータを交えて取り上げ、一定の条件の下で多変量解析を行った結果、救急車搬送が多い病院は医業収支比率が有意に低い傾向があることに言及した。とはいえ、新入院患者を獲得するために救急対応は非常に重要であるし、地域医療を支えるという意味においても救急医療への注力は不可欠である。
そもそも、急性期病院では救急車の不応需を減らす取り組みや救急搬送患者の入院率について目標設定を行い、これらの指標を高めようという努力が行われることが多いという現実がある。
本稿では、2024年度の病床機能報告における救急車の受け入れ件数(以下、救急車搬送件数)と23年度のDPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告(以下、DPC公表データ)の救急車搬送入院件数を組み合わせることで救急車入院率を試算し、病院機能や地域別などの実態に迫り、各病院の今後の取り組みを模索するためのデータをまとめる。
■救急受け入れ件数が同じでも入院率に差
図表1は、横軸に救急車搬送件数、縦軸に救急車搬送入院件数を取り、救急車搬送がゼロの病院を除き、全国の病院をプロットしたものだ。救急車搬送件数が多いほど、救急車搬送入院件数も多くなるという当たり前の事実を確認できる。ただし、同じ救急車搬送件数であっても、救急車搬送入院件数にはばらつきがあるのも事実であり、病院機能による違いに迫っていく。
図表2は、
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